てきとうに駄弁る

ふと興味が湧いたことを深堀する

サラリーマン増税と政府税制調査会について

 

お久しぶりです。

とにかく忙しくて投稿がまさか四ヶ月ぶりくらいになるとは思いませんでした笑

というわけで今回は今話題のサラリーマン増税とやらについてテキトーに話して行こうと思います。

皆さん、サラリーマン増税についてどう思いますか?

 

「ロシアのウクライナ侵略等の影響で物価は上昇し続けてるのに、給料は上がらずただでさえ生活が苦しい、その上度重なる増税で今度は退職金にまで増税して岸田は国民を殺す気か!」

サラリーマン増税は考えてない、って言ってるけど、どうせ選挙が終わったら掌返すに決まってる」

「岸田総理を下ろせ、日本が滅びる」

全くもって許せないですね、国民から搾取することしか考えてない首相は早く辞めるべきですよね!

 

まあ、おおよそ世論はこんな感じで現在加熱しておりますが、そう言ってる人たちにまず聞いてみたいです。

これ↓ 全部読みましたか?

https://www.cao.go.jp/zei-cho/shimon/5zen27kai_toshin.pdf

というわけでサラリーマン増税の話の出処や、政府税制調査会というものについて調べてみたので良かったら読んでって下さい。

 

目次

 

サラリーマン増税の報道と根拠

 

岸田政権、今度は〝退職金増税〟勤続20年以上が標的!?「いまになって長期で安定した働き方否定…倫理的にも問題」識者(1/4ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

恐らくこれが一番古いと思われる?報道です。

 

ここからZAKZAKは度々、

「岸田総理がサラリーマン増税を推し進めようとしている」

というような記事を載せ続けています。

恐らくですが、僕が調べた限りでは今回の事を最も取り上げていたのがZAKZAK夕刊フジ)と思われます。

続いて日刊ゲンダイ、後は週刊誌などが多かった印象で、大手はあまり積極的に取り上げてた印象がありません。

 

さて、それではZAKZAKが主張するサラリーマン増税の話の出処はどこなのでしょうか?

 

政府税制調査会(首相の諮問機関)は6月30日、同じ会社に長く勤めるほど退職金への課税が優遇される現行制度の見直しを検討するよう求める中期答申を岸田首相に提出した

 

上記の記事の中から一部を引用しましたが、その中に書かれている"政府税制調査会(首相の諮問機関)"

ここが出した答申とやらにサラリーマン増税について書かれていたそうです。

といっても正直何のことかよく分からないと思うので、まずは政府税制調査会について見ていこうと思います。

 

 

政府税制調査会とは

 

wikipedia "政府税制調査会"より引用

税制調査会(ぜいせいちょうさかい)は、内閣府の審議会等の一つ。内閣総理大臣の諮問に応じて、租税制度に関する基本的事項を調査審議する(内閣府本府組織令31条、33条。税制調査会令)。なお、自由民主党内の審議機関の一つである税制調査会自民党税制調査会、自民税調)や民主党政策調査会におかれていた税制調査会などと区別するため、政府税制調査会(政府税調)と呼ばれることも多い。

政府税制調査会 - Wikipedia

 

これが、政府税制調査会というものらしいです。

 

Weblio辞書 実用日本語表現辞典 "諮問"より引用

ある事案に関して、有識者で構成された審議会などのような機関に問い、見解を求めること。諮問を受けた機関が回答する、回答を提出することは「答申」などと呼ばれることが多い。

「 諮問(しもん)」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書

 

つまり、内閣総理大臣が税金についての見解を求め(諮問)、それに対して調査し回答(答申)する機関が政府税制調査会ってことになります。

よく、"政府税調"と略されています。

これとは別に、自民党お抱えの自民税制調査会というのもあるらしく、こっちは"自民税調"と略されており、ニュースなんかで単語が出てきたときは区別出来るようにしておくと良いと思います。(他の政党にもある)

そして、今回話題のサラリーマン増税の出処は、この"政府税調"が6月30日に提出した

"「わが国税制の現状と課題 -令和時代の構造変化と税制のあり方ー」(令和5年6月30日)"

https://www.cao.go.jp/zei-cho/shimon/5zen27kai_toshin.pdf

この中期答申が元となっているみたいです。

 

またこのような"審議会"は政府内に数多く存在するみたいです。

 

wikipedia "審議会"より引用

審議会(しんぎかい)は、日本においては国または地方自治体などの行政庁に付随する行政機関、あるいは民間の組織などに任意に設けられる合議制の諮問機関の名称の一つである。外部の有識者や利害関係者を招いて意見を聞くことが多い。

 

なお、民間においても企業や政党、各種団体の運営においても類似の諮問会議が開かれることもある。

審議会 - Wikipedia

 

政府のみでは分からない事案に対し、専門的な見解を得るためにこういった審議会が設置されているのです。

しかし、

 

wikipedia "審議会" "批判"の項目より引用

審議会委員の人選は官庁の裁量で決めることができ、官庁の人脈など恣意的な要素で委員が決定されることがあり、初めから議論の結論が決まっている場合も少なくないという指摘がある。審議会そのものに対しても問題について審議や議論をする場ではなく、審議をしたことを示すための単なる手続きの場となっており、審議会の意向に沿ったお墨付きを与える御用学者的な役割を果たしている委員もおり、中立性に関して疑問が呈されることも少なくない。

 

人選はすべて政府任せなため、政府にとって都合のいい人間が集められている、それによって恣意的な結論になりがち、という指摘も存在します。

 

 

答申内容とサラリーマン増税について

 

ここまでは、サラリーマン増税の話の出処について見てきたわけですが、ここからは実際の答申内容について触れていきたいと思います。

と言っても261ページもある資料全部に触れるわけにはいかないので、サラリーマン増税に関する部分に絞って触れていきます。

まずは、"退職金増税"について書かれてる部分から

 

「わが国税制の現状と課題 -令和時代の構造変化と税制のあり方ー」(令和5年6月30日) 96ページ目より引用

② 退職所得

退職金は、一般に、長期間にわたる勤務の対価の後払いとしての性格とともに、退職後の生活の原資に充てられる性格を有しています。

このような退職金の性格から、一時に相当額を受給するため、他の所得に比べて累進緩和の配慮が必要と考えられることを踏まえ、退職所得については、他の所得と分離して、退職金の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の2分の1を所得金額として、累進税率により課税されます(2分の1総合課税)(個人住民税は比例税率)。退職所得控除は、勤続年数20年までは1年につき 40万円、勤続年数20年超の部分については1年につき70万円となっています。

この累進緩和措置に対する近年の制度改正としては、短期間のみ在籍することが予定されている役員などについて、給与を低く抑え、高額の退職金を支払うことにより、税負担を低くすることも可能であったことから、平成 24 年度税制改正及び令和3年度税制改正において、勤続年数5年以下の法人役員等の退職金については「2分の1総合課税」を適用せず、勤続年数5年以下の法人役員等以外の者の退職金についても、退職所得控除額を控除した残額のうち 300 万円を超える部分については、「2分の1総合課税」を適用しないこととされました。

退職金の支給形態を、退職一時金から確定給付企業年金法等に基づく年金方式に移行する動きも増えていますが、退職者が、退職時に一時金として受け取れば、「みなし退職所得」として退職所得課税が行われており、確定給付企業年金確定拠出年金ともに、依然として相当数が一時金受給を選択しているのが実態となっています。

現行の課税の仕組みは、勤続年数が長いほど厚く支給される退職金の支給形態を反映したものとなっていますが、近年は、支給形態や労働市場における様々な動向に応じて、税制上も対応を検討する必要が生じてきています。

 

退職金に関する課税方式とか初めて知りました笑

これを読む限り、

"短期離職の労働者が増加傾向にあり、支給形態も変化しつつある市場に合わせて、これから退職金への税制度も見直しを検討する必要がある"

こう書かれているようにしか見えず、増税云々なんて話には繋がらない気がします。

 

ここで再度ZAKZAKの記事を引用してみます。

 

岸田政権、今度は〝退職金増税〟勤続20年以上が標的!?「いまになって長期で安定した働き方否定…倫理的にも問題」識者 2ページ目より引用

政府税調は答申のなかで「退職金の支給形態や労働市場の動向に応じて税制上も対応を検討する必要が生じている」と指摘している。

実際に見直すとどうなるか。国税庁の資料では、勤続30年で退職金を2500万円受け取るモデルケースの場合、所得税および復興特別所得税額は「58万4522円」となる。勤続20年以上の優遇措置がなくなったと仮定して夕刊フジが同じ条件で試算すると「89万822円」で、30万円以上も増えてしまうのだ。

岸田政権、今度は〝退職金増税〟勤続20年以上が標的!?「いまになって長期で安定した働き方否定…倫理的にも問題」識者(2/4ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

 

確かにこれなら増税と言われるのも頷けますね。

だがちょっと待ってほしい。

この記事は"仮定を前提化"していないだろうか?

 

この部分、

"勤続20年以上の優遇措置がなくなったと仮定して"

確かに長期労働者の退職金課税の優遇措置を無くせば結果的に増税になりますが、答申資料には"優遇措置無くす"なんて風には書かれていません。

寧ろ、短期離職の労働者を今より優遇するパターンだって考えられるわけで、その場合は逆に減税となります。

 

しかし、ZAKZAKの記事は勤続20年以上の優遇措置がなくなるという仮定を前提化し、増税だなんだと騒いでいるのです。

これは恣意的な解釈による扇動としか言えないと思います。

勿論、これに乗っかった新聞や週刊誌、または評論家やコメンテーターは数多くいるので、それら全員の責任と言えるでしょう。

 

次に、これですが

岸田政権に仰天!通勤手当も〝サラリーマン増税〟 政府税調でリストアップ 扶養、配偶者、生命保険控除もターゲット - zakzak:夕刊フジ公式サイト

 

この記事では配偶者控除や扶養控除、生命保険控除、後は現在非課税の通勤手当や社宅の貸与にも減額・課税すると書いてありますが、

 

「わが国税制の現状と課題 -令和時代の構造変化と税制のあり方ー」(令和5年6月30日) 102〜103ページ目より引用

(3)非課税所得等

先述のとおり、個人所得課税の課税対象となる「所得金額」は包括的に捉 えることが原則ですが、例えば、給与所得者に支給される旅費などの実費弁 償としての性格を有するものや、一定の社会保障給付など生活保障的性格を有するもののように、その性質や政策的要請により非課税や免税とされて、 課税対象から除かれている所得が存在します。

これらの非課税所得等については、それぞれ制度の設けられた趣旨がありますが、本来、所得は漏れなく、包括的に捉えられるべきであることを踏まえ、経済社会の構造変化の中で非課税等とされる意義が薄れてきていると見 られるものがある場合には、そのあり方について検討を加えることが必要です。特に、政策的要請により非課税等とされている制度については、長寿命化により、そうした所得がこれまで以上に蓄積していく可能性等に鑑みれば、 他の所得との公平性や中立性の観点から妥当であるかについて、政策的配慮の必要性も踏まえつつ注意深く検討する必要があります。

また、所得には、金銭による収入のみならず、現物給付、すなわち物や権利その他の経済的利益による収入も含まれますが、被用者に対する社宅の貸与、食事の支給、従業員割引など、一定の条件を満たす少額の現物給与など一定のものについては、税務執行上追求しないなどの趣旨から課税しない取扱いがされています。

 

<参考:主な非課税所得>

・ 給与所得者の旅費や職務の性質上欠くことのできない現物給付などの実費弁償的性格に基づくもの

通勤手当(1ヵ月当たりの合理的な運賃等の額(上限 15 万円))のように、住宅事情等からみた場合にその全額を課税対象とすることは妥当でないとの政策的配慮に基づくもの

雇用保険上の失業等給付、生活保護給付、遺族基礎年金、遺族厚生年金(遺族自身の厚生年金がある場合は、遺族厚生年金がそれを上回る部分のみ)、給付型奨学金などの社会政策的配慮に基づくもの

・ NISA口座内における上場株式等の譲渡益や配当等のように特定の政策目的のための措置として講じられるもの

・ 家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産(貴金属や宝石、書画、骨とうなどは、1個又は1組の価額が 30 万円以下のもの)に係る譲渡所得などの担税力の考慮に基づくもの

当座預金の利子など少額不追求の見地によるもの

 

このように、現在非課税になっているものをリストアップし所感を述べている程度のものとなっています。

SNSでも同様の指摘があったらしく後日こんな風に弁明していました。

【編集局から】「サラリーマン増税」記事に大反響 ネット賛否 通勤手当や社宅貸与など「非課税所得」に指摘も - zakzak:夕刊フジ公式サイト

まあ特に言うことはありません。

 

配偶者控除や扶養控除、生命保険控除の減額についても同じような指摘にしかならないので、気になる人が各自読んで下さい。(匙投げ)

 

 

今回の件を取り上げた新聞社について

 

さて、ここまで夕刊フジの記事ついて取り扱ってきた訳ですが、この件を掲載していたのは夕刊フジだけじゃありません。

日刊ゲンダイ、後は各週刊誌となります。

お気づきの人もいるかも知れませんが、大手新聞社はあまり積極的に取り上げていません

SNSで炎上した後あたりから、散発的に取り上げ始めた程度のもので、当初は積極的な報道はありませんでした。

 

これについて、"財務省タブー"だとか"報道しない自由"だとかそういう意見が出ていました。

 

wikipedia "報道におけるタブー" "概要"項目より一部引用

財政・財務省タブー

マスメディアは財務省プロパガンダに従って、緊縮財政を推進する立場で報道を行っているという指摘がある。

日本の国債を中心とした公的債務残高は対GDP比で拡大し、現在では200%を超えている。これを受け、財務省を中心とする政府や多数派の経済学者は消費増税や歳出削減などの緊縮財政を通じて財政再建を行うべきであるという主張をし、プライマリー・バランス黒字化目標を掲げ推進している。

一方で、日本国債が全て円建てで発行されているため、日本銀行を支配し円の発行権を持つ政府が国債債務不履行を引き起こす可能性は極めて低く、公的債務残高や財政赤字の拡大を問題視する必要はないという主張も多数存在する。また緊縮財政政策を行えばGDPの毀損や税収の減少が発生し、却ってGDP比の債務残高が拡大する事を懸念して、プライマリー・バランス黒字化目標の破棄と積極財政を求める有識者も多い。現代貨幣理論の流行やコーンウォール・サミットもあり、緊縮財政が経済停滞の原因であるとして、増税に反対し積極財政を求める声は増加している。

しかし大手マスメディアは、このうち緊縮財政派の主張を一方的にプロパガンダする論調で言論を展開することがそうでない場合と比較して圧倒的に多く、反対派からは中立性に欠けると強く批判されている。

実際に読売新聞、朝日新聞日経新聞等の大手新聞社は総論で消費増税に賛成しており、消費増税が実施された際もそれを前向きに評価する社説を掲げている。さらには、政府の予算編成関連の報道をする際も歳出拡大に釘を刺す意見を添えている。その論調は、国債発行を伴う政府の財政拡大が将来世代につけを回す無責任な放漫財政だという批判で一貫している。

池上彰辛坊治郎、玉川徹、村尾信尚小倉智昭坂上忍などキー局や準キー局の報道番組や教養番組やワイドショーでオピニオンリーダーを務めていたりかつて務めていた出演者やジム・ロジャーズなどの大多数の投資家は、緊縮財政派の立場で一方的に意見を展開している。そして、積極財政を求める声やその論拠の説明は大手マスメディアの言論空間においては、ほぼ封殺されている。

また国税庁を配下に置く財務省が、消費税の新聞に対する軽減税率や税務調査権力を利用してマスメディアに圧力をかけている可能性も指摘されている。

報道におけるタブー - Wikipedia

 

実際にこういうタブーがあるかどうかは分かりませんが、こういった事は僕自身も感じた事はあります。

しかし、今回の件はこれとはあまり関係ないんじゃないかと思います。

"答申内容を増税と解釈するのは、いくらなんでも無理がある"

普通にこれが理由な気がします。

ただ、夕刊フジの記事がSNSで思ったより反響があったから後から散発的に取り上げ始めた、大手新聞社の動きはおおよそこんな所じゃないかと僕は推測します。

 

さてそんな内容を何故夕刊フジ日刊ゲンダイは取り扱ったのか?

それはその2社がそういう性質の新聞社だからです。

一昔前のネット掲示板2ちゃんねる等)においては、その2社の記事をソースにすると鼻で笑われる位信用に値しないものとして扱われていました。

 

夕刊フジとは (ユウカンフジとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

日刊ゲンダイとは (ニッカンゲンダイとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

 

しかし今回、そんな信用に値しないと言われる新聞社の記事がソースでこんな大騒ぎになってしまいました。

それは何故なのかについて考えていこうと思います。

 

 

SNSの情報と認知閾

 

wikipedia "認知閾"より引用

認知閾(にんちいき、英語: Cognitive threshold)とは、人間にとって理解が追い付かなくなり始める社会問題の複雑度のことである。理解できないほど複雑な問題に直面した社会の構成員は不合理な思い込みを優先するようになり、問題への対処を誤り続けることによって、事態を悪化させてしまう。この状態が何世代も継続してしまうと、必ず社会が崩壊する。認知閾は、アメリカの社会生物学レベッカ・コスタ(英語版)が著書『文明はなぜ崩壊するのか』の中で定義した概念である。

認知閾 - Wikipedia

 

理解が追いつかない程問題が複雑になると、人は安易な判断をしがちになり、思い込み(バイアス)によってより自体を悪化させてしまう、それに至る問題の複雑度を"認知閾"といいます。 

今回のSNSの反応を見ていると、正にこれが当てはまると思い取り上げました。

SNSでは毎日、有象無象の情報が飛び交っており、それを濁流のように浴びせられます。

その結果、情報の処理が追いつかなくなり認知閾に達するというのが僕の推測です。

そして、流れている情報に対し脊髄反射的に反応・拡散、これらを繰り返すことによって情報を疑う、いわゆる事実確認をしなくなっていくのではないかと思います。

さらに今回の件は、「税金」という単品で見ても少々難しい話、加えて「増税」「岸田首相」という怒りが煽られる要素、「サラリーマン」というあまりに身近な話だった為にここまでの"炎上"に繋がったのではと思います。

 

wikipedia "炎上(ネット用語)" "特徴"項目より引用

炎上のほとんどは、リンクされた引用元の記事をきちんと読まずに「歪曲されたタイトルだけ読んでコメント」という脊髄反射的かつ感情的な投稿の連鎖によって起き、全国の普通の人も参加して延焼する構図になっている。そのため、アメリカの調査でもTwitterFacebookなどソーシャル・ネットワーキング・サービスSNS)利用者がタイトルだけを見て、リツイートなど拡散・コメント投稿をする者が約60%を超えており、国民の情報リテラシーの向上を総務省は訴えている。

日本でも『虚構新聞』のジョーク記事などをタイトルを見ただけで事実と信じて拡散したり、SNSなどインターネット上で、リンク先の元記事を読まずに情報源(ソース)の内容・正確性を確認しなかったりする人が多いことが問題になっている。更に、記事の中身には違うことを誤解・ミスリードを助長する炎上タイトルで、記事で受け答えしていた発言者の発言内容が歪曲されたことで炎上が起きることもある。このため、アクセス数稼ぎなどの理由で釣りや煽りを狙ったタイトルをつけるマスメディアに対しても批判の声がある。

また文化庁が発表した平成28年度(2016年度)版『国語に関する世論調査』で、ネット炎上に参加する意志があるのは2.8%という結果であった。

田代光輝は炎上を「サイト管理者の想定を大幅に超え、非難・批判・誹謗・中傷などのコメントやトラックバックが殺到することである(サイト管理者や利用者が企図したものは「釣り」と呼ばれる)」と定義している。

炎上 (ネット用語) - Wikipedia

 

「歪曲されたタイトルだけ読んでコメント」

昨今の炎上は、このようなパターンが多くみられますが、今回も同じ流れがありました。

正直、炎上に参加している人の大多数は、政府税調の答申どころかソースのZAKZAKの記事すら読んでいないのでは?と睨んでいます。

 

ZAKZAKが記事を掲載

    ↓

まとめサイト等が歪曲したタイトルを付けて拡散

    ↓

それを見た人が脊髄反射的に批判・拡散

    ↓

味を締めたZAKZAKが更に記事を掲載

    ↓

まとめサイト等が歪曲したタイトルを付けて拡散

    ↓

それを見た人が更に憤慨し批判・拡散

 

このようなサイクルが2週間位の短期間で繰り返され、炎上に発展していった印象です。

 

wikipedia "認知閾" "概要"項目より引用

レベッカ・コスタは自身の著書の中で、認知閾に関して、「社会問題が高度に複雑化すると、人間の脳は社会問題への理解が追いつかなくなる『認知閾(いき)』という状態に達し、以下のような非合理な思い込みや行動に走る傾向にある。」と述べた上で、その例として下記のような行動を挙げた。

 

・反対はするが対策はない(衒学者と同様)

・個人に責任を転嫁して問題を解決したと酔いしれる

・怪しげな因果関係に飛びつく(陰謀論およびファクターXと同様)

・物事の原因が不明でも何か一つにこじつける(タブロイド思考と同様)

・緩和策や応急処置に満足し根本問題を先送りする(戦力の逐次投入と同様)

・問題を細分化してより複雑にしてしまう(スパゲティプログラムと同様)

・行き過ぎた経済偏重行動をとる(総量規制と同様)

翻訳者の藤井留美は、訳書『文明はなぜ崩壊するのか』のあとがきにおいて下記の例を追加した。

・何もしないことを罪悪視する風潮になる

 

これが、認知閾に陥った人の具体的な特徴です。

ソースは夕刊フジ(笑)の情報がここまでの大騒ぎになったのは、常に情報が溢れており、脊髄反射的に共感を示す事が求められるSNSの環境が相まって、ファクトチェックにまで手が回らなかった為と思われます。

SNSが影響工作の主戦場なんて話を聞いたことがありますが、正に今回の件でSNSでは世論誘導がやりやすい、という事が証明されてしまいました。

 

 

岸田首相「サラリーマン増税まったく考えていない」について

 

岸田首相、突然〝憤慨の裏〟「サラリーマン増税まったく考えていない」 政府税調中期答申「全261ページ」増税派の理屈満載 ZAKZAKより引用

岸田文雄首相は25日、自民党税制調査会の宮沢洋一会長と官邸で会い、「サラリーマン増税はまったく考えていない」と伝えた。LGBT法の拙速な法制化や、マイナンバーをめぐる問題続出などを受け、一部報道機関の内閣支持率が30%以下の「危険水域」に突入するなか、夕刊フジなどが「サラリーマン増税」への懸念を報じたことに不満をあらわにしたようだ。ただ、首相の諮問機関である政府税制調査会(政府税調)が提出した全261ページもの中期答申には、幅広い分野での「増税・負担増」候補が盛り込まれている。「(今は)まったく考えていない」としても、将来的な増税の懸念は残ったままだ。

岸田首相は「『サラリーマン増税』うんぬんといった報道があるが、全く自分は考えていない」と述べたという。宮沢氏が官邸で面会後、記者団に明らかにした。

宮沢氏は「党税調でそういう議論をしたことは一度もないし、党税調会長の私の頭の隅っこにもない」と伝えると、首相は「よかった」と応じたという。宮沢氏は「政府税調はものを決める機関ではない」とし、中期答申について「今の政府税調のメンバーの最後ということで、『卒業論文』みたいなもの。正直言って制度の紹介がほとんど。一部のマスコミが面白おかしく報道している」と語った。

岸田首相、突然〝憤慨の裏〟「サラリーマン増税まったく考えていない」 政府税調中期答申「全261ページ」増税派の理屈満載(1/3ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

 

今月25日、岸田首相は正式に「サラリーマン増税は考えていない」と声明を出したそうです。

というかあの内容をサラリーマン増税と解釈されるとは思ってもみず、それなのにSNSでは思わぬ反響があったため改めて強調したって感じでしょう。

相変わらず夕刊フジの記事には恣意的なものを感じますが、正式にそういった発言をしたということでとりあえずこれは事実として扱っていいと思います。

大手新聞もこの声明は積極的に報道し自体は収束するかと思いましたが、SNS上では懐疑的な声が多く出ています。

「支持率低下を恐れて、引っ込めただけ」

「(今は)考えてないってだけでしょ」

「選挙が終わればしれっと増税するに決まってる」

こういった類いの投稿が目立ちました。

酷いものだと、

「また山上が現れてくれないかな」

という人格を疑うようなコメントも散見されました。

 

また、元財務官僚・高橋洋一氏は以前サラリーマン増税について以下のように批判していましたが

【日本の解き方】サラリーマン増税の魂胆暴く!安倍・菅政権で「開店休業」の政府税調、岸田政権で息を吹き返した 元財務官僚・高橋洋一氏(1/2ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

 

岸田首相が声明を出した後も

829回 サラリーマン増税しませんって本当か?だったら変な答申出させるな!【怒】 - YouTube

このような動画を投稿し、批判を止めませんでした。

高橋氏は動画内で

「261ページの答申は長すぎる」

「あれだけ検討、検討って書かれてたら誰でも増税するって思う」

「岸田総理を擁護してる人は、答申を読んでない」

と仰っていました。

"答申が長すぎる" 正直これは同意します笑(読むの物凄く大変だった…)

しかし、"誰でも増税するって思う"という発言については、正直曲解してるだけとしか思えませんし、"擁護してる人は答申を読んでない"という発言に至っては、反論にすらなっておらず、一方的なレッテル貼りで気に入らない意見を切り捨ててる様にしか見えません。

 

では何故、このように事実を受け入れられないのでしょうか?

勿論、岸田首相に対して全く信用がないからというのが大きいと思いますが、それ以外にも"認知的不協和"というものが関わって来ると思います。

 

wikipedia "認知的不協和"より引用

認知的不協和(にんちてきふきょうわ、英: cognitive dissonance)とは、人が自身の認知とは別の矛盾する認知を抱えた状態、またそのときに覚える不快感を表す社会心理学用語。アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーによって提唱された。人はこれを解消するために、矛盾する認知の定義を変更したり、過小評価したり、自身の態度や行動を変更すると考えられている。

認知的不協和 - Wikipedia

 

要は自分の認識と矛盾する情報、または認知を抱えた状態を不快に感じる心理効果です。

これを解消するには大きく2つあり、自分の間違いを認めるか、矛盾する情報を否定するかになります。

 

自分の間違いを認め、受け入れるのは大変厳しく、その為相手を批判したりするようになります。

その批判が正当なものなら良いですが、大抵は詭弁または人身攻撃に走り、手がつけられない状態になります。

だからこそ、何事も過信と鵜呑みは禁物に

過信と鵜呑みの先にあるのは、自分を正義、相手を悪とレッテルを貼り、拳を振り上げて後戻りのできない状態に陥る、例え自分の方が間違っていたとしても認められなくなる。こんなことになる危険性があるって、とあるYouTuberが言ってました笑

 

 

まとめ

 

ということでここまで今回のサラリーマン増税の騒動について見てきましたが、結論としては恣意的な解釈による世論誘導、それに扇動されてSNSを中心に話が拡がった。

僕の調べた限りではこんな感じになりました。

ただ、これは増税"しない"ことを確定する情報でもなく、現段階ではそこは"分からない"という結論にしか行き着かないです。

増税を"する" or "しない"の二択ではなく、"分からない"という事実・結論を大事にするべきだと思います。

勿論、ここまでまとめた話には僕の解釈やバイアスが含まれるため、鵜呑みにせず疑問に思った部分は徹底的に事実確認をすることを心掛けて欲しいです。

それを怠った結果が、結局今回の騒動につながった訳なので、次への教訓にしたいものです。

 

さて今回、岸田首相を叩く、更には暴言を吐き誹謗中傷を繰り返した人たちにもう一度聞きたいです。

これ↓ 読みましたか?

https://www.cao.go.jp/zei-cho/shimon/5zen27kai_toshin.pdf

勿論、261ページもある資料を全部読めなんて言えません。僕自身、読むのは途轍もなく大変でしたし、内容だってちゃんと理解できている自信もありません。

だから、読んでないなら口出しするな!なんて言うつもりもありません。

ただ、読んでないなら分かったつもりになってはいけません

そもそもこういった答申の存在すら知らず、出処不明な情報を鵜呑みにして批判をするのは大変危険です。

"何事も過信と鵜呑みは禁物に"

自分は大して物事を知らないということを自覚し、SNSで節度のある立ち振る舞いをしていく必要があると思います。

正確に情報を得て、正しく批判しましょう。

それが、安易な世論誘導に抗う手段となります。

 

というわけで四ヶ月ぶりにブログを書いてみたわけですが、結構な大作になってしまいました…笑

調べて書き上げるのに丸2日位掛かったので正直疲れました笑

特に261ページもある答申を読むのは本当に辛かったです。

もう少しコスパよくブログを書き上げたいものです。

それでは、今回は以上。またね!!